東京大空襲の被災者、国に対し集団訴訟

March 10th, 2007

さっき錦糸町駅から自宅までの夜道を歩いていて、思わず夜空を見上げた。ちょうど62年前の今頃は、超低空で飛行するB29の編隊が、ジェラルミンの胴体を猛火の反射で真っ赤に光らせながら、焼夷弾を雨のように降らせていたはずだ。街全体が炎に包まれ、烈風が人々を吹き飛ばした。川へ逃げた人もいたという。今年は暖冬だが、こんな冬の夜に川に浸かることなど考えられないと思った。実際、川へ逃げた多くの人は、凍えて力尽きたり、窒息したり、水面より上に出ているところを焼かれたりして、助からなかった。

今日(時刻としては昨日)、三月九日、東京大空襲の被災者や遺族112人が、国に総額12億3200万円の損害賠償と謝罪を求める集団訴訟を起こした。空襲被害を受けた民間人として初の集団訴訟である。


提訴のため東京地裁に入る、東京大空襲の遺族や被災者ら[asahi.com より]

原告側は、「民間人被害者に何も援助をせず、切り捨て放置した国の責任を問う」「東京大空襲が国際法違反の無差別爆撃だったことを裁判所に認めさせ、戦争を始めた政府の責任を追及したい」と訴えた。

戦傷病者戦没者遺族等援護法は、軍人・軍属で障害を負った人やその遺族に年金を支給するよう定めているが、同法を一般戦災者にも適用するべきだとして、これまでにも名古屋空襲の被災者が国家賠償を求める訴訟をおこしたことがある。しかし1987年の判決で敗訴している。

原爆の被爆者に対する補償にくらべ、通常の爆弾や焼夷弾空襲の被害者に対する補償がほとんどないことも、被災者にとっては納得がいかないことだと聞いたことがある。三月十日未明の空襲だけでも、家族の生命やすべての財産を失った人々が数百万人いる。空襲後、罹災証明書を持つ人にはいくばくかの見舞金が支払われたという話もあるが、当然十分なものではなかっただろう。

コメントを書く